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ドイツ語と英語はどう似ている?その歴史と共通点

ドイツ語と英語の関係と歴史

ドイツ語と英語は、ともにインド・ヨーロッパ語族のゲルマン語派に属し、共通の祖先を持っています。

そのため、2つの言語には類似した単語や文法構造が多く見られる一方で、歴史的背景や文化の違いから、それぞれ独自の発展を遂げてきました。

今回はドイツ語と英語の関係や、ドイツでの英語の通用度、そして両言語の歴史的なつながりについて紹介します♪

 

 

ドイツ語と英語の類似

ドイツ語と英語は、単語や発音、文法において共通点があります。

まず、似ている単語をいくつか例として挙げると、以下のようなものがあります。

 

[ 同系語 ]

英語 / ドイツ語

Water / Wasser

Hand / Hand

House / Haus

Friend / Freund

Family / Familie

name / Name

drink / trinken

mother / Mutter

father / Vater

son / Sohn

new / neu

old / alt

 

[ 借用語 ]

Computer / Computer

Internet / Internet

telefon: / Telephone

radio / Radio

hotel / Hotel

restaurant / Restaurant

Universität / University

Student / Student

Professor / Professor

 

これらの単語は、発音やスペルが非常に似ており、両言語が同じルーツを持つことを示しています。

 

また、文法においても、英語とドイツ語には共通点があります。

例えば、どちらの言語も基本的なSVO(主語-動詞-目的語)の語順を持っており、過去形や現在完了形の構造にも類似点があります。

 

【例】

英語:I give you this book.

ドイツ語:Ich gebe dir dieses Buch.

 

I : Ich

give : gebe

you : dir

this : dieses

book : Buch

のように、語順も含めすべての単語がそのまま一致しています。

 

もっと複雑な文になると、単語を一対一に対応させるのは難しくなりますが、簡単な文では一対一の対応も可能ということは、英語とドイツ語がかなりよく似ているかと思います。

 

 

一方で、発音や語彙の面での違いも多く、これが2つの言語の独自性を際立たせています。例えば、英語の「th」音は、ドイツ語には存在せず、ドイツ語の強いR音は、英語には見られません。

こちらの違いは後程、紹介します。

 

 

ドイツで英語は通じる!?

結論から言うと、特に都市部や若年層ではかなり高い英語力があり、一般的なコミュニケーションには問題ありません。

大都市や観光地では、レストランやホテル、公共交通機関などで英語が広く通じます。

さらに、ドイツの教育システムでは、英語は義務教育の一環として早い段階から教えられており、若い世代ほど英語を流暢に話す傾向があります。

 

一方、地方部や年配の世代では、英語の使用が限られることがあります。

特に、ドイツの年配者の中には、英語教育を受けていない人もいるため、日常会話で英語を話すのは難しい場合があります。

しかし、ドイツ全体としては、ヨーロッパの中でも英語が比較的通じやすい国の一つとされています。

 

 

ドイツの英語力の現状

ドイツ人の英語力は、ヨーロッパの中でも非常に高い水準にあります。

英語能力指数(EF English Proficiency Index)によると、ドイツは英語力の面で「非常に高い」と評価されています。

特に、ドイツの若者は多くが流暢に英語を話し、ビジネスや学術の分野でも英語が重要な役割を果たしています。

 

また、ドイツの高等教育機関では、英語で授業を行う大学やプログラムが増加しています。

特に、国際的な学生や研究者を対象としたプログラムでは、英語が主要な言語として使用されており、ドイツ語を話せなくても留学や仕事ができる環境が整っています。

 

 

ドイツと英語の歴史

ドイツ語と英語の歴史的なつながりは、何世紀にもわたって形作られてきました。

両言語のルーツは、共通のゲルマン祖語にあります。

紀元前500年頃にさかのぼるゲルマン語派は、ヨーロッパ北部で話されていた言語群であり、そこから現代のドイツ語や英語が分かれて発展しました。

 

中世には、イギリスとドイツは文化や貿易を通じて強い関係を持っていて、特に、13世紀から15世紀にかけてのハンザ同盟は、北海とバルト海沿岸の都市間での貿易ネットワークを築き、ドイツ語が多くの貿易都市で共通語として使用されていました。

これにより、英語にも多くのドイツ語起源の単語が取り入れられました。

 

さらに、近代には、科学技術や哲学、文学の分野でドイツ語が国際的に重要な言語となり、英語話者もドイツ語を学ぶ必要がありました。

特に19世紀、ドイツの哲学者や科学者、作家たちの影響は大きく、英語圏の人々が彼らの作品を読むためにドイツ語を学ぶ機会が増えたそうです。

 

 

ドイツ語と英語の違い

似ている点が多いドイツ語と英語ですが、やはり違いもあります。

 

1.文法の違い

ドイツ語の文法は、英語よりも複雑です。

ドイツ語には名詞の性(男性、女性、中性)があり、それに応じて冠詞や形容詞の変化形が異なります。

 

英語には、名詞に「性別」はありません。

英語を話す人たちにとって、名詞に「性別」があるなんて、ちょっと想像しづらいですよね。例えば、「机」や「手紙」に男性とか女性とか、考えたこともないかもしれません。ところが、ドイツ語では、名詞の一つひとつに、まるで生きているかのように「性別」が備わっているのです。

 

ドイツ語の「名詞の性」には、

  • 男性名詞

  • 女性名詞

  • 中性名詞

の3つがあります。

 

英語と違って、フランス語やスペイン語など、ヨーロッパの多くの言語には、実はこの「名詞の性」が存在します。

 

興味深いことに、大昔、英語にもドイツ語のように3つの性があったと言われています。

英語もドイツ語も、元をたどれば「ゲルマン祖語」と呼ばれる古代の言語から生まれた兄弟のようなものなので、このゲルマン祖語には、すでに3つの性が存在していたようなのです。

つまり、ドイツ語は、ご先祖様であるゲルマン祖語の特徴を、今も大切に受け継いでいると言えるかもしれません。

 

どんな風に名詞に性別が割り当てられているのか?

残念ながら、ほとんどの場合、単語ごとに覚えるしかありません。

辞書を引けば、名詞の横に必ず男性名詞なら「der」、女性名詞なら「die」、中性名詞なら「das」といった記号が書いてありますので、それを参考にしましょう。

 

【例】

  • Himmel (天) は 男性名詞

  • Erde (地) は 女性名詞

  • Mond (月) は 男性名詞

  • Sonne (太陽) は 女性名詞

家族に関する単語では、

  • Vater (父) は 男性名詞

  • Mutter (母) は 女性名詞

  • Kind (子供) は 中性名詞

 

中には、ちょっと意外なものもあります。

例えば、「女の子」を意味する Mädchen という単語。女の子なので、てっきり女性名詞だと思いますが、Mädchen は 中性名詞 になります。

そして、この名詞の性が、ドイツ語を学ぶ上でなかなか厄介者です。

なぜなら、名詞の性別によって、その名詞にかかる冠詞や形容詞の形が変わってしまうからです。

 

英語では、

  • the father

  • the mother

  • the child

のように、どんな名詞にも「the」をそのまま使えますが、ドイツ語では、

  • der Vater

  • die Mutter

  • das Kind

のように、「the」に当たる定冠詞が、名詞の性によって「der」「die」「das」と変化してしまうのです。

 

名詞の性によって、他にも形容詞の形が変わったりと、なかなか複雑なルールがあるのですが、まずは「ドイツ語の名詞には性別があるんだ!」ということを覚えておきましょう。

 

また、格(主格、対格、与格、属格)によっても文中の名詞や代名詞が変化します。

一方、英語はこのような複雑な変化をほとんど持っておらず、比較的簡潔な文法構造となっています。

 

例えば英語でも、主語に合わせて以下のように人称変化します。

I play basketball.
He plays basketball.

こんな形で、主語に合わせて動詞が変化しますよね。

このように英語で起こる人称変化といえば、「3人称単数(sheやheなど)」の時、動詞の末尾に「(e)s」がつく、程度の変化ですが、ドイツ語では、私、君、彼、私達、あなたたち、という主語によって異なる人称変化をします!

 

 ドイツ語の変化

 英語の人称変化

 私(ich)

語幹 + e

spiele

語幹

play

 君(du)

語幹 + st

spielst

語幹

play

 彼(er)

語幹 + t

spielt

語幹 + s

plays

 彼女(sie)

語幹 + t

spielt

語幹 + s

plays

 それ(es)

語幹 + t

spielt

語幹 + s

plays

 私達(wir)

語幹 + en

spielen

語幹

play

 君達(ihr)

語幹 + t

spielt

語幹

play

 彼ら(sie)

語幹 + en

spielen

語幹

play

 

英語は彼、彼女、それの時にsがつくのみの変化ですが、ドイツ語ではより多様な変化が起きていることがわかりますね。

このように、英語と比べると主語に合わせた動詞の変化(人称変化)が多いこともドイツ語が難しい理由の1つです!

 

 

2.不規則変化動詞が多い

ドイツ語は英語よりも人称変化のパターンが多いことをご紹介しましたが、

なんと上の表の通りに変化しない動詞(不規則変化動詞)も多数あるのです…。

 

 与える

 (乗り物で)行く

 食べる

 助ける

 私(ich)

gebe

fahren

essen

helfe

 君(du)

gibst

fährst

isst

hilfst

 彼(er)

gibt

fährt

isst

hilft

 彼女(sie)

gibt

fährt

isst

hilft

 それ(es)

gibt

fährt

isst

hilft

 私達(wir)

geben

fahren

essen

helfen

 君達(ihr)

gebt

fahrt

esst

helft

 彼ら(sie)

geben

fahren

essen

helfen

 

「君、彼、彼女、それ」のところが、通常の人称変化と異なる変化をしているのです!!

こういった不規則変化動詞も多いため、難しいと感じる方も多いかと思います…。

 

 

3.語順の違い

英語は基本的にSVO(主語-動詞-目的語)の語順ですが、ドイツ語は語順がより柔軟で、文の構造や目的に応じて動詞が文末に来ることがよくあります。

例えば、従属節では動詞が最後に置かれるため、英語話者にとっては理解しづらい場合があります。

 

英語の主要文では、動詞は常に主語の後に置かれ、その位置が変わることはありません。

  • I eat an apple every day. (私は毎日りんごを食べます。)

しかし、ドイツ語では、動詞の位置が大きく変わる場合があります。

  • Ich esse jeden Tag einen Apfel. (私は毎日りんごを食べます。)

この例文では、英語とドイツ語の語順は同じです。しかし、接続詞や副詞句などが文頭に来ると、ドイツ語では動詞の位置が変化します。

  • Jeden Tag esse ich einen Apfel. (毎日、私はりんごを食べます。)

このように、ドイツ語では副詞句 "Jeden Tag" が文頭に来たため、動詞 "esse" が主語 "ich" の前に移動しています。これは、倒置と呼ばれる現象です。

 

 

4.従属文における動詞

ドイツ語の従属文は、英語と大きく異なる点の一つです。英語では、従属節内でも主語の後に動詞が来ますが、ドイツ語では動詞が文末に移動します。

  • I think (that) you are right. (私はあなたが正しいと思います。)

  • Ich denke, dass du recht hast. (私は、あなたが正しいと思います。)

英語では "you are right" と従属節内でも語順は変わりませんが、ドイツ語では "du recht hast" と、動詞 "hast" が文末に移動しています。

 

 

5.分離動詞

ドイツ語には、分離動詞と呼ばれる、基本動詞に前綴りがついた動詞が存在します。分離動詞は、主要文では前綴りが動詞から分離して文末に移動するという、なんともトリッキーな動きをします。

  • He gets up early every morning. (彼は毎朝早く起きます。)

  • Er steht jeden Morgen früh auf. (彼は毎朝早く起きます。)

英語では "gets up" と動詞は一緒ですが、ドイツ語では "aufstehen" という分離動詞が使われており、"steht ... auf" と前綴り"auf" が文末に移動しています。

 

 

このように、ドイツ語の語順は英語よりも複雑に見えますが、これは決してランダムなものではありません。

ドイツ語の語順は、文のリズムや情報構造、強調したい語句などによって変化し、これらの要素が組み合わさることで、独特のリズムと表現の幅広さが生まれます。

例えば、文頭に置かれた語句は、強調されたり、新しい情報として提示されたりする傾向があります。また、動詞を文末に置くことで、文全体に緊張感を持たせ、最後に重要な情報を伝える効果もあります。

語順の自由度が高いからこそ、ドイツ語は論理的で、かつ感情豊かな表現も可能な、奥深い言語です。

 

 

6.発音の違い

ドイツ語と英語の発音も大きく異なります。

英語に特有の「th」音や、柔らかいR音に対し、ドイツ語では強いR音やシャープな発音が特徴です。

また、ドイツ語には二重母音が多く、これも英語とは異なる発音の要素です。

 

 

 

 

 

 母音の発音

母音

ドイツ語

英語

例(ドイツ語 - 英語 - 日本語)

a

[aː] (アー)

[æ] (ア)、[ɑː] (アー)

Tag - tag - 日

e

[eː] (エー)

[e] (エ)、[iː] (イー)

seen - sean - 見られる

i

[iː] (イー)

[ɪ] (イ)、[aɪ] (アイ)

wie - like - ~のように

o

[oː] (オー)

[ɒ] (オ)、[oʊ] (オウ)

so - so - だから

u

[uː] (ウー)

[ʌ] (ア)、[uː] (ウー)

Hut - hoot - 帽子

 

【例】

  • ドイツ語の "Tag" は「ターク」のように発音しますが、英語の "tag" は「タグ」に近いです。

  • ドイツ語の "sehen" は「ゼーエン」のように発音しますが、英語の "sean" は「シーン」に近いです。

 

子音の発音

子音

ドイツ語

英語

例(ドイツ語 - 英語 - 日本語)

r

[ʀ] (舌奥を震わせる音)

[ɹ] (舌先を巻く音)

Rock - rock - 岩

ch

[ç] (舌先を口蓋に近づけて出す音)

通常は発音しない

ich - I - 私

v

[f] (フ)

[v] (ヴ)

Wasser - water - 水

w

[v] (ヴ)

[w] (ゥ)

Wie - why - なぜ

th

[t] (ト)

[θ] (thの発音), [ð] (thの発音)

Theater - theater - 劇場

【例】

  • ドイツ語の "Rock" は、英語の "rock" よりも喉の奥で発音するようなイメージです。

  • ドイツ語の "ich" の "ch" は、英語にはない音で、「ヒ」と「ハ」の中間のような音です。

  • ドイツ語の "Wasser" は「ヴァッサー」、"wie" は「ヴィー」のように発音します。

  • ドイツ語の "Theater" は「テアター」のように発音し、「th」は「θ」や「ð」の音では発音しません。

 

以上のようにドイツ語は、英語よりも母音をはっきり発音する傾向があり、子音も強く発音する傾向があります。

また、ドイツ語には、英語にはないウムラウト (ä, ö, ü) の発音があります。

 

 

ドイツ語と英語は、似ている部分もあれば、大きく異なる部分もある言語です。共通の祖語を持ちながらも、それぞれの歴史や文化を反映して独自の進化を遂げたドイツ語と英語。その違いを比較することで、言葉の多様性と、その背後にある人間の思考や文化の豊かさを改めて実感することができます。

 

ドイツ語と英語の比較を通して、言葉の面白さや奥深さを少しでも感じていただけたら嬉しいです。